タイ国日本人会文化部
メナム句会
植物(花・草木)
タイには暑季、雨季、涼季(寒季)の三季があります。
【暑季 ฤดูร้อน / หน้าร้อน】 二月中旬〜五月中旬。四月十三日のソンクラーン節(タイ正月、水掛祭)の頃が最も暑く、中部のバンコクでも気温が四〇度を超えることがある。国花の金雨花(ゴールデンシャワー)、火焔樹など色鮮やかな花々の咲く季節。
【雨季 ฤดูฝน / หน้าฝน】 五月中旬〜十月中旬。スコールの季節。特に、雨季の初めと終わりに雷雨が多くなる。ドリアンやマンゴスチンなど果物が豊富に出回る。
【涼季 ฤดูหนาว / หน้าหนาว】 十月中旬〜二月中旬。一般には「寒季」といい、タイ語のルドゥー・ナーウもその意味だが、メナム句会では、より実感に近く語感の美しい「涼季」をよく使っている。十二月から一月にかけて最も気温が下がり、北部の山地では降霜が見られ、バンコクでも毛布の必要な肌寒さを感じることがある。
メナム句会ではタイの季語の蒐集をしています。ほんの一例ですが、ご紹介します。
金雨花 きんうか
暑季
ราชพฤกษ์
別名:ゴールデンシャワー、ナンバンサイカチ
タイ名:ラーチャプルック、クーン
マメ科。タイの国花。ラーチャプルックは「王の樹」の意。タイ北部のロムレーン(乾季の風)など地方特有の呼び名も多い。「金雨花」は英名からの訳語で、『ハワイ歳時記』から。黄色一色の花房が藤の花のように咲く。花期は長く、二〜五月頃に咲くが、最も暑い四月が見頃。
タイ桜(インタニン)
暑季
อินทนิล
別名:オオバナサルスベリ
タイ名:インタニン
タイ桜と呼ばれる花の一つ。ミソハギ科サルスベリ属。第二次大戦中、故郷を偲んだ日本兵が紫桜などと呼んだ。ジャワザクラとも。タガログ名はバナバ。
タイ桜(チョムプーパンティップ)
暑季
ชมพูพันธุ์ทิพย์
別名:モモイロノウゼン、キダチベニノウゼン
タイ名:チョムプーパンティップ、チョンプーパンティップ
タイ桜と呼ばれる花の一つ。ノウゼンカズラ科。遠目では桜そっくりだが、花は縮緬状のラッパ型で、花全体がポトンと落ちる。名の由来は、一九五七年、パンティップ・ボリパット殿下が南米から持ち帰って植樹したため。チョムプーは、ピンクの意。バンコクに多い。十二〜一月頃から暑季にかけて咲く。
タイ桜(カンラパプルック)
暑季
กัลปพฤกษ์
別名:バライロモクセンナ
マメ科。花は開花時はピンク色、散る頃は白。花房が枝全体に長袖状に付く。花期は二〜四月。
チャイヤプルック
暑季
ชัยพฤกษ์
別名:ジャワセンナ
マメ科。花は開花時はピンク色、濃い赤に変化し、散る頃は白に変わる。カンラパプルックとよく似ているが、花房が枝先に付く。花期は二〜四月。
カーラプルック
暑季
กาฬพฤกษ์
別名:モモイロナンバンサイカチ
マメ科。花は開花時は赤、ピンク色から橙色に変化する。「カーラ」は「閻魔」の意味。花期は二〜三月。
火焔樹 かえんじゅ
暑季
หางนกยูงฝรั่ง
別名:鳳凰木(ホウオウボク)、火炎樹、フレームトゥリー
タイ名:ハーンノックユーン・ファラン
マメ科。タイ名は「西洋孔雀の尾羽」の意。花の形が孔雀のようである。緋色の花弁がはらはらと散り、樹下は真っ赤な絨毯のようになる。正式な和名は鳳凰木だが、火炎木(この項の二つ下)の名と混同され、「火焔樹」という呼び名が定着した。
黄胡蝶 おうこちょう
หางนกยูงไทย
タイ名:ハーンノックユーン・タイ
マメ科。熱帯アメリカ原産。花は火焔樹(鳳凰木)によくにているが、こちらは一〜二・五メートルの低木。一年中咲く。
火炎木 かえんぼく
暑季
แคแสด
別名:アフリカンチューリップトゥリー
タイ名:ケーセート
ノウゼンカヅラ科。前項の「鳳凰木(火焔樹)」と色はそっくりだが、花の形はチューリップ形。花全体がポトンと落ちる。
プルメリア
涼季
ลั่นทม / ลีลาวดี
別名:テンプルトゥリー、パゴダトゥリー、印度素馨(インドソケイ)
タイ名:ラントム、リーラーワディー
キョウチクトウ科。正式なタイ名はラントムで「凶事を逃れる」という意味だが、「悲しく辛い」というタイ語「ラトム」に語感が似ているため、近年は、リーラーワディー(優美な女性)と呼ばれている。花色は白(中央が黄)、ピンクなど。夜間に芳香を放つ。ハワイでレイに使われる花として知られる。年中咲くが、二月頃に落葉し、花ばかりとなる姿が美しい。
ブーゲンビリア
涼季
เฟื่องฟ้า
別名:ブーゲンビレア、筏葛(イカダカズラ)
タイ名:フアンファー
オシロイバナ科。花のように見える苞(ほう)の色は濃いピンク、サーモンピンク、橙、黄、白など。苞の中央に小さな花がある。年中見られるが、二月頃に盛りとなる。
茉莉花 まつりか
雨季
มะลิ
別名:ジャスミン
タイ名:マリ
モクセイ科ソケイ属。タイ名のマリは、梵語のマリカーが語源。夜間に芳香を放ち、翌日の昼に落花する。蕾は神仏に供えたり慶事に贈ったりするプアンマーライ(花の輪飾り)に使う。八月十二日の母の日(シリキット前王妃誕生日)に贈る。
モーク
โมก
別名:ウォータージャスミン、オマツリライトノキ
キョウチクトウ科。花は白で小さく、直径二センチメートルほど。複数の花が房状に地面を向いて咲く。夕方になると、ジャスミンのような芳香を漂わせる。タイ名のモークは「解脱」という意味で(パーリ語では「モーカ mokkha」)、寺によく植えられる。生垣、鉢植えも多く見られる。
ラック
รัก
別名:クラウンフラワー、アコン
ガガイモ科。タイ名のラックは「愛」の意。インドではシヴァ神に捧げられる神聖な植物で、愛の神カルマが放つ矢のシンボルにもなっている。花は五弁で直径二〜三センチほど、中央の美しい花冠は、ジャスミンの花輪の留めに使われる。花色は白と薄紫色がある。花期は一年中。
姫の爪
เล็บมือนาง
別名:インドシクンシ
タイ名:レップムーナーン
シクンシ科。蕾の時は白く、開くとピンク色に、やがて真紅に色が変わる。夕方になると甘い芳香を漂わせる。庭木によく植えられる。タイ名は「姫の爪」の意。花期は一年中。
印度花梨 いんどかりん
暑季
ประดู่
別名:印度紫檀(インドシタン)
タイ名:プラドゥー
マメ科。街路樹によく見かける高木で、芳香のある小さな黄色の花をつける。花期は5月頃。朝に咲き、夕方には散ってしまうが、1シーズンに何度も花をつける。タイ王国海軍の花に指定されている。幹は木材として使用される。
プラドゥーデーン
涼季
ประดู่แดง
別名:モンキーフラワートゥリー
マメ科。グアテマラ原産。十〜二十メートルの高木。花期は一〜二月。
アンチャン
อัญชัน
別名:蝶豆(チョウマメ)、バタフライピー
マメ科。花は蝶の形で、花色は濃紺、紫が多いが、稀に白、ピンクもある。菓子などの着色料や、石鹸、シャンプー、染料としても使われる。
ハイビスカス
ชบา
別名:仏桑花
タイ名:チャバー
アオイ科。タイでは年中咲く。色は鮮やかな赤が多く、ピンク、橙、黄色、クリーム色、白なども。八重咲きなど品種が非常に多い。
オーキッドトゥリー
暑季
ชงโค
別名:ムラサキソシンカ
タイ名:チョンコー
マメ科。花色は、ピンク、白、紫がある。
砲丸の木 ほうがんのき
สาละลังกา, ลูกปืนใหญ่
別名:キャノンボール・トゥリー
タイ名:ルークプーンヤイ、サーラランカー
サガリバナ科。タイ名のルークプーンヤイは「砲丸」の意、サーラランカーは「スリランカの沙羅双樹」の意味。日本で沙羅双樹といえば夏椿をさすことが多いが、タイでは、このサーラランカーをさすことが多い(タイの「沙羅双樹」は三種類ある)。砲丸のような大きな実が生る。花期はほぼ一年中。
山丹花 さんたんか
เข็ม
別名:イクソラ
タイ名:ケム
アカネ科。イクソラ(Ixora)は梵語の「シヴァ神」をポルトガル語訳した言葉。タイ名のケムは「針」の意。枝先に固まって咲く小さな十字形の花の先端が針のように尖っている。突き出した蕾も針のようである。花色は赤が多いが、紅、ピンク、橙、黄、白もある。拝師の日(ワン・ワーイクルー、六月第一木曜日)に、針のように鋭敏な頭脳を持てるようにという願いを込め、教師にケムの花を贈る習慣がある。花期は一年中。
ドーンヤー・クイーン・シリキット
ดอนญ่าควีนสิริกิติ์
アカネ科。花のように見えるピンク色の部分は苞で、中央の黄色い部分が花。一九六三年、当時のラーマ九世プーミポン国王御夫妻がフィリピンを訪問されたことを記念し、フィリピン政府がシリキット王妃のために命名し、献上した。花期は一年中。
クルクマ
雨季
กระเจียว
別名:クルクマ・シャローム
タイ名:クラチアウ
ショウガ科ウコン属。東北部チャイヤプーム県にある湿地帯の群生が有名。七〜八月頃に咲く。
瓶ブラシ
แปรงล้างขวด
別名:金宝樹(キンポウジュ)、ブラシノキ、ハナマキ
タイ名:プレーンラーンクワット
フトモモ科ブラシノキ属。花弁は開花後すぐに落ちるが、赤い雄蕊が残り、ブラシのように見える。たくさんの雄蕊の先の葯(やく)はまるで金粉を付けたようなので「金宝樹」という。タイ名は「瓶ブラシ」の意。
チュワンチョム
ชวนชม
別名:アデニウム
キョウチクトウ科アデニウム属。アフリカ原産。タイでは中国系の家でよく植えられる。
梯梧 でいご
暑季
ทองหลาง
タイ名:トーンラーン
マメ科。タイにはトーンラーンラーイ、トーンラーンダーン(葉に斑がある)という種類が多い。
合歓 ねむ
จามจุรี, จามจุรีแดง, ก้ามปู
別名:アメリカネムノキ、モンキーポッド、レイントゥリー
タイ名:チャームチュリー、チャームチュリーデーン、カームプー
マメ科。合歓の木には多種があるが、タイでよく見るのはチャームチュリーという高さ二十メートルにもなる種類である。花弁は小さい。たくさんのピンク色の雄蕊が糸のように見える。国立チュラーロンコーン大学の木に指定されている。
ケムムワン
เข็มม่วง
キツネノマゴ科。一〜二メートルの低木。タイ名は「紫の針」の意。ケム(山丹花)と花の形は似ているが、山丹花に紫色はなく、違う種類である。
フークワーン
หูกวาง
別名:モモタマナ、トロピカルアーモンド
シクンシ科。タイでは通常、年に二回(一〜二月頃と七〜八月頃)落葉する。落葉する前に、一部の葉が黄、紅に変わる。街路樹、庭木、海岸の防風林としてよく植えられている。タイ名の「フー」は「耳」、「クワーン」は「鹿」の意味で、文字通り鹿耳を思わせる分厚く大きな葉を持ち、「鹿耳樹」「鹿耳木」などとも呼ぶ。通常、三段重ねの傘状の枝振りをなすので「傘の木」ともいう。メナム句会では「フークワン紅葉」「フークワン落葉」「フークワン若葉」を季語として詠んでいる(「フークワン」は「フークワーン」と同じ)。
マンゴーの花
ดอกมะม่วง
雨季から涼季にかけて、白い小さな花が霞のようにたくさん咲く。二、三月頃、小さな青い実がブランコにぶら下がるように生り、四月頃、黄色く熟す。メナム句会では、「花マンゴー / マンゴーの花」「青マンゴー」は涼季、熟した「マンゴー」は暑季の季語として詠んでいる。
唐辛子の花
ดอกพริกขี้หนู
プリックキーヌーという小粒の大変辛い唐辛子の花。直径約一センチの小さな五弁の白い花が咲く。
タムルンの花
ดอกตำลึง
タムルンはウリ科の蔓草で、和名ヤサイカラスウリ。葉は食用で、スープなどに入れる。
含羞草の花
ดอกไมยราบ
含羞草(オジギソウ)はマメ科の草。タイ名マイヤラープ。タイではよく見られる。
パパイアの花
ดอกมะละกอ
パパイア(パパイヤ)のタイ名はマラコー。花は白く小さいので、目立たない。
ケーの花
ดอกแค
マメ科。和名は白胡蝶(シロゴチョウ)。花は食用で、スープや炒め物にする。
ドラゴンフルーツの花
ดอกแก้วมังกร
サボテン科。タイ名はケーウマンコーン(龍の珠)。
マナーオの花
ดอกมะนาว
マナーオ(ライムの一種)は、柑橘類らしい白い小さな花が咲く。
バーンチャーウ・シールアン
บานเช้าสีเหลือง
別名:黄花ツルネラ(キバナツルネラ)、ターネラ・ウルミフォリア
トゥルネラ科。3〜4センチの小さな花。朝咲いて、正午にはしぼむ。タイ名のバーンは「咲く」、チャーウは「朝」、シールアンは「黄色」の意。バーンチャーウ・シーカーウという白色の種もある。